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2025.06.20

CSXトランスポーテーション、米国で自律ドローンを活用し鉄道のリスクを低減

CSXトランスポーテーションは、北米において重要なインフラプロバイダーとして、1ガロンの燃料で1トンの貨物を500マイル以上輸送できる列車で効率的に貨物を輸送しています。同社の鉄道網はアメリカ人口の約3分の2にサービスを提供しており、国のサプライチェーンに不可欠な要素となっています。

NestGen ’25のセッションの一つで、CSX TransportationのGISサービス担当テクニカルディレクター、パトリック・バーネット氏と、シニアGISエンジニア、アンソニー・フォイシー氏にお話を伺いました。CSX Transportationは、米国東部で26州、ワシントンD.C.、そしてカナダの一部にまたがる2万マイルに及ぶ広大なネットワークを持つ大手貨物鉄道会社です。鉄道リスクを軽減するための自律型ドローン運用の導入について、お二人にお話を伺いました。

課題

-パトリック・バーネット(GISサービス テクニカルディレクター)

「CSXトランスポーテーションにとって、安全性は最も重要な柱です。私たちは、従業員や地域社会を含むすべての人々が、出勤したときと同じように無事に帰宅できることを願っています。」

 

CSXは広範囲にわたる鉄道インフラの維持管理において、次のような深刻な課題に直面していました:

・作業員の安全リスク:

従来の点検作業では、作業員が線路や分岐器、ジョイントバーを実際に歩いて確認する必要があり、稼働中の操車場では常に危険と隣り合わせでした。

・高精度な検査要件:

鉄道部品には、たとえば1/8インチ(クレジットカード程度の幅)を超えるギャップの検出など、非常に精密な測定が求められ、小さな不具合でも重大な脱線事故につながりかねません。

・運行の中断:

従来の点検方法では鉄道運行を一時的に停止する必要があり、全体の効率が低下していました。

・目視検査の限界:

人間による検査にはばらつきがあり、重大な欠陥を見逃すリスクがあります。

 

CSXにとって、欠陥の見逃しは脱線・設備破損・環境災害・人命への脅威といった、極めて重大なリスクにつながるものでした。

解決方法

CSXは、最新のハードウェア、専用ソフトウェア、そして機械学習を組み合わせた自律型ドローン検査システムを導入。鉄道点検の在り方を根本から変革しました。

使用技術:
・機材:DJI Matrice 350 RTK+Phase One P3 IXM 100カメラ(80mmレンズ)
・自動ドック:Hextronics Atlas(バッテリー自動交換+全天候型シェルター)
・ソフトウェア:FlytBase(自律飛行・ミッション管理)

 

– アンソニー・フォイシー(シニアGISエンジニア)

「FlytBaseは非常に優れた編集機能を提供しており、ドローンが正確に必要なルートを飛行し、基本的な写真測量原理に基づいて画像を取得、すべてのミッションを保存できるようになっています。」

システム構成とワークフロー

・飛行制御:FlytBaseが線路上の正確なルートを自律飛行
・衝突回避:CASIA Gシステムで人間の監視に代替
・エッジ処理:現地で機械学習モデルが画像を処理・欠陥検出
・統合:CSXのGIS・運用システムに完全連携

ドローンは検査後、自動的に戻って充電とデータ送信を行い、次のミッションへ即座に移行可能。検出された不具合(例:1/8インチ超の隙間、緩んだボルトなど)は、保守担当者に即時通知されます。

実施内容

数年にわたるFAA(米連邦航空局)との関係構築を経て、CSXは**目視外飛行(BVLOS)**の認可を取得。既存インフラ(照明柱など)を「自然な遮蔽」とする「インフラマスキング」手法が認可取得の鍵となりました。

運用体制も、現地の主操縦士+遠隔の副操縦士というハイブリッドモデルで効率化を図っています。

影響

・安全性向上:危険地帯に人員が立ち入る必要を削減
・検出精度の飛躍的向上:微小な欠陥も機械学習が確実に検出
・運用の継続性:点検中も鉄道運行に支障なし
・迅速な対応:ダッシュボード経由で即時に保守指示可能

 

-パトリック・バーネット

「時速7マイルで100フィート上空からクレジットカードの幅を測るようなもの。だからこそ、最も難しい課題から取り組んだのです。」

今後の展開

CSXは2025年にドローン導入を大幅に拡大予定で、既に30件近いユースケースを特定済(うち8件は実装済)。将来的には、線路横断面の計測や高温変形(サンキンク)の検出、さらには32,000kmの全鉄道路線の監視にも活用が見込まれています。

結論

CSXによる自律型ドローン導入は、安全性と効率性を両立した鉄道点検の革新例です。高度なハードウェアとAIによって、これまで検出不可能だった微小なリスクを可視化。従業員、地域社会、そしてステークホルダーすべてにとっての価値を高める先進的な取り組みとなっています。

FAQ

Q1. CSXは鉄道インフラの検査にドローンをどのように活用していますか?

CSXは、高解像度カメラを搭載した自律型ドローンを活用し、鉄道操車場上空を所定のルートで飛行し、線路、分岐器、連結バーの詳細な画像を撮影します。これらの画像は機械学習アルゴリズムによって分析され、1/8インチという微細な欠陥も検出可能です。結果はタブレットを通じて保守チームに即座に共有されます。

Q2. 鉄道における自律型ドローンの運用にはどのような規制上の承認が必要ですか?

鉄道会社は、目視外(BVLOS)運航を行うために、連邦航空局(FAA)から特別な免除を受ける必要があります。CSXは、包括的な安全ケースの作成、検知・回避技術の導入、そして現場パイロットと遠隔操縦士の両方による運用モデルの活用によって、これらの承認を取得しました。

Q3. 自律型ドローンシステムは線路上のどのような欠陥を検出できますか?

このシステムは、1/8インチを超える分岐点の隙間、連結バーの不具合(ボルトの欠落または緩み、亀裂)、2インチを超えるレールの隙間、軌道ゲージの不具合といった重大なレール欠陥を検出できます。これらの機能は、重大な安全上の危険となる前に問題を特定することで、脱線事故の防止に役立ちます。

Q4. 鉄道業務に自律型ドローン検査を導入した場合の投資収益率はどのくらいですか?

具体的なROI数値は公表されていないものの、その価値は、高額な脱線事故の防止、運行中断の削減、作業員の安全性向上、そしてより頻繁かつ一貫した検査の実現に表れています。また、このシステムは傾向分析も可能であり、緊急メンテナンスが必要になる前に、発生しつつある問題を特定することができます。

 

 

この記事を書いた人

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奥村英樹

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大手電機・エネルギー企業での技術営業を経て、ドローン業界へ。営業・開発PM・操縦士など幅広い実務経験を活かし、2022年にSORABOTを設立。ドローンの社内導入支援や運用課題の解決を行う「ドローンアドバイザー」として活動中。ドローンをもっと簡単・便利に使える社会を目指しています。

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