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2025.12.18

小型無人機等飛行禁止法が改正へ!?イエローゾーン1000mへ拡大・直罰化でドローン運用はどう変わる ※検討段階

ドローン点検・測量・空撮などの現場では

「航空法」だけでなく、小型無人機等飛行禁止法(いわゆる“ドローン規制法”)も、飛行可否を左右する重要なルールです。
警察庁の有識者検討会の報告書では、重要施設周辺の規制(いわゆるレッドゾーン/イエローゾーン
)について、イエローゾーンの拡大(おおむね1000m)や、イエローゾーン上空飛行の“直罰化”など、運用側に直撃する見直し方針が示されました。

技 術の進展に伴う危険なドローン飛行へ の 対 策 に 関 す る 報 告 書 ( 概要)

技 術の進展に伴う危険なドローン飛行へ の 対 策 に 関 す る 報 告 書(案)

この記事では、公開資料の内容をもとに「何が変わる見込みか」「なぜ変えるのか」「運航者は何を準備すべきか」を、実務目線で整理します。
※2025/12/18 作成

まず前提:小型無人機等飛行禁止法の「レッドゾーン/イエローゾーン」とは

小型無人機等飛行禁止法は、国会議事堂、官邸、皇居、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの重要施設の安全確保を目的に、上空飛行を規制する法律です。

一般に、

  • レッドゾーン:対象施設の敷地・区域の上空

  • イエローゾーン:対象施設の周囲「おおむね300m」の上空(現行)
    として説明されます。

また、例外的に飛行できるケース(施設管理者の同意・土地所有者の同意など)であっても、公安委員会等への通報が必要とされています。

結論:今回「変わる見込み」のポイント

イエローゾーンの範囲を「おおむね1000m」へ拡大

報告書(概要)では、対処のための時間的猶予を確保する観点から、イエローゾーンを**「おおむね千メートル」に拡大すべき**と示されています。

 イエローゾーン上空飛行を「直罰化」(=命令違反を待たずに罰則へ)

現行では、レッドゾーンは飛行した時点で直ちに罰則適用なのに対し、イエローゾーンは“直罰規定がなく”措置命令違反で初めて罰則です。
これを、報告書では「抑止のため直罰化すべき」と提言しています(※刑罰はレッドゾーンと差を設ける方向)。

「守るべき対象施設」を追加(大規模イベント・要人行事など)

報告書では、例えば

  • G7サミット等の重要国際会議の会場等(準備・運営に必要な期間も含めて指定できるように)

  • 国内要人が出席する行事会場等(必要な期間を定めて指定できるように)
    といった追加が提言されています。

 違法ドローン対処で「警察と施設管理者側の連携」を明確化

報告書では、違法ドローン対処のために警察官が実施可能な措置として、「対象施設管理者等に必要な措置を命ずること」を含む旨を明確化すべき、と整理されています。

なぜ今見直すのか(資料が示す背景)

資料では、制定当時と比べてドローンの性能が大きく変わり、300m前提の設計が崩れている点が強調されています。

  • 制定当時:映像伝送距離が市街地で200〜300m程度 → 300m内に操縦者がいる前提で「発見・措置命令」が可能だった

  • 現在:映像伝送距離が500m〜10km、携帯電話網利用ならエリア内飛行が可能 → イエローゾーン外から操縦してレッドゾーン侵入も現実的

  • 速度向上(高速機の存在)で、300mだと対処資機材での対応時間が足りないという問題提起

  • 積載重量の増大等で、イエローゾーン上空からでも重大な危害が可能という整理(=抑止のため罰則見直し)

ドローン運用者への実務インパクト(現場で変わること)

 事前の「飛行可否チェック」の範囲が一気に広がる

イエローゾーンが300m→おおむね1000m(1㎞)になると、
点検・空撮の「現地付近に重要施設がないか?」の確認が、これまで以上に必須になります。

特に、定期的に撮影を行う現場では、今まで大丈夫だったけどこれからはNGということも増えてくると思われます。

 「うっかり侵入」の重みが増す(直罰化の方向)

イエローゾーン上空飛行が直罰化される方向だと、これまで以上に

  • ジオフェンス(自社ルール)

  • ルート設計時のバッファ確保

  • 現場での最終確認(地図・座標・施設の指定状況)
    の重要度が上がります。

 例外飛行(同意・通報)の“運用の円滑化”もセットで検討

一方で報告書(概要)では、ドローン利活用にも配慮して
施設管理者の同意取得手続・公安委員会等への通報手続の円滑化を図るべき、とされています。

技 術の進展に伴う危険なドローン飛行へ の 対 策 に 関 す る 報 告 書 ( 概要) の掲載

 

よくある質問(FAQ)

航空法で許可・承認を取っていても、小型無人機等飛行禁止法の対象エリアは別ですか?

別物です。小型無人機等飛行禁止法は重要施設の安全確保の観点で規制され、航空法(DID/空港周辺/150m以上など)とは軸が異なります。

DIPSの飛行計画通報を出していればOK?

航空法側のDIPSでの飛行計画通報手続と、こちらの通報(公安委員会等)は別建ての整理です。少なくとも現行制度では、警察庁が「公安委員会等への通報が必要」と明記しています。

実際の通報書類提出窓口は、エリアを管轄する警察署です。

イエローゾーンはだれも飛ばせなくなるの?

小型無人機等飛行禁止法では、施設への許可と警察への通報をすることで飛行が可能となります。

しかし、飛行の方法や内容によっては、施設の許可が下りないこともあれば、撮影したデータの内容によっては閲覧。・削除を求められることもあります。

まとめ:今すぐ運用側がやるべき3つ

  1. 飛行エリア周辺の重要施設指定の確認を、標準手順に組み込む(点検・測量・空撮・ドローンポート運用すべて)

  2. ルート設計に施設周辺のバッファを持たせる(「うっかり侵入」を潰す)

  3. 例外飛行が必要な案件は、同意取得/通報のフローを事前に整備する

今後、法改正として具体化した段階で、現場のチェックリストや申請・通報フローはアップデート必須になります。

その他、法制度の変更点に関する記事はこちらご参考ください。

飛行申請 航空局標準マニュアルの改訂

飛行申請 1日化について

この記事を書いた人

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奥村英樹

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大手電機・エネルギー企業での技術営業を経て、ドローン業界へ。営業・開発PM・操縦士など幅広い実務経験を活かし、2022年にSORABOTを設立。ドローンの社内導入支援や運用課題の解決を行う「ドローンアドバイザー」として活動中。ドローンをもっと簡単・便利に使える社会を目指しています。

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